活動内容/排尿管理研究会/第31回

第31回排尿管理研究会  [2013年1月19日(土)]

第31回排尿管理研究会の様子お正月気分が一掃され、春を告げる花だよりが聞かれるようになりました。 多職種の方々による発表でしたが、切り口が異なり、聴きごたえのある内容と喜んでいただけました。

 

<一般講演>

演題1.「酸化マグネシウムの剤形変更によるコンプライアンス向上と緩下作用に及ぼす影響」
シオエ製薬株式会社 学術情報部 平山 淑美

酸化マグネシウムは安全性が高く習慣性がないことから、長年、便秘薬として用いられてきました。 しかし、酸化マグネシウムの剤形は散剤であることから、いくつか問題点がありました。 無機化合物特有の金属的な味、口中の不快感、調剤時の分包機への付着など。これらを払拭するため に開発されたのが酸化マグネシウムの錠剤「マグネット錠」です。マグネット錠は崩壊後の粒子が 小さいために、経管栄養チューブの通過性が良くなり、経管投与が行いやすくなったと言います。 また、胃酸との反応も良くなり、緩下作用にも影響を与えると考えられるなど、新しい発見の報告で した。

演題2.「ベッドサイド水洗トイレの研究」
TOTO株式会社 UD研究部 賀来 尚孝

高齢者施設の主な取り組みの一つに転倒事故防止対策が挙げられます。今回の発表はベッドサイド 水洗トイレを導入し、転倒事故の減少と排泄の自立向上に取り組んだ高齢者の検証について報告し ていただきました。ベッドサイド水洗トイレを使用することにより、寝たきりの状態から、歩行 介助でトイレ使用可能になったケースもあったといいます。ポータブルトイレと比較すると介護者の 労力軽減や感染対策、それに利用者の尊厳を守れるようになったようです。簡単な工事でベッドサイドに設置できるか可搬式水洗トイレの効果は、次回の報告にもっと期待できそうです。

演題3.「活動報告『災害時 トイレの困りごとシンポジウム&トイレマイスター養成講座』」
静岡コンチネンス学習会 佐藤 文恵
   
静岡コンチネンス学習会 佐藤 文恵氏日本のトイレは世界でも最高レベルの環境や文化を持っていると言われていますが、災害時には 備えが十分とは言えません。今回の報告は「災害時のトイレの大切さ」を市民が共有するために 実施した「市民対象のシンポジウム」と「トイレマイスター養成講座」について話していただきま した。排泄ケアの講義から演習まで、さまざまな対応を学び、受講者には災害時トイレマイスター 認定書が交付されたそうです。行政の備えを知ること、また、自助や互助・共助実践に向けて地 域のつながりの大切さを再認識する内容でした。     

演題4.「高齢者急性期病院での排泄ケア啓発活動」
独立行政法人国立長寿医療研究センター 横山 剛志

愛知県内の老人施設、訪問介護センターにおける排泄ケア実態についてのアンケート及び聞き 取り調査の検証です。急性期病院が留置カテーテル、オムツの供給源となっており、不十分な 排尿ケアが行われていることが示唆されています。そんな中、演者の勤務している病院では、 構成メンバーが委員会を実施しながら、看護部全体で高齢者の排泄ケアの標準化を目指してい ます。平成18年から今日までの活動は、うまくいかないことも多かったそうですが、 継続してきたことで実になったこともたくさんあったという話は、味わい深い言葉でした。

演題5.第3回間質性膀胱炎国際専門家会議(ICICJ)について」
泌尿器科上田クリニック 上田 朋宏

本年3月21日から23日まで、メルパルク京都にて、第3回間質性膀胱炎研究会を開催いたし ます。海外からの招聘演者は28名で、間質性膀胱炎の世界トップ研究者が臨床・基礎を問わず 集結致します。また、一般演題は32題の応募がありました。未だに有効な治療法がない間質性 膀胱炎に基礎研究の充実を図るために、臨床と基礎の融合を図ることにしました。このコンセン サスは来年1月の日本泌尿器科学会英文誌のInternational Journal of Urologyのsupplement にまとめます。

演題6.「不全頚髄損傷者の自己導尿獲得に向けた段階的アプローチ
     〜生活イメージを描きながら〜」

神奈川リハビリテーション病院 作業療法科 一木 愛子

脊髄損傷者は神経因性膀胱により、自排尿が困難となり、排尿障害を呈することが多いです。 患者さんはできるだけ留置カテーテルなどを回避して、自己導尿での排尿、あるいは自排尿を 望みます。今回、転落によりC4不全四肢麻痺となった50歳代男性の導尿動作支援の取り組み を、4段階にわたり話していただきました。導尿動作獲得に当たり大切なことは、生活全体の イメージを持ち実施していくことの重要性を語っていただきました。

演題7.「認知症のある高齢女性の尿失禁と睡眠覚醒パターンの関連」
柳ヶ浦高等学校 看護学科 溝口 晶子

植物のイラスト介護老人保健施設に入所中の高齢女性23名。認知症の尿失禁があります。無作為に行った方法は コントロール期の3日間は定時の排尿ケアを行い失禁のある状態とし、介入期の3日間は尿意や排尿パターンに合わせて個人ケアを行いました。尿意の無い人にはオムツセンサーシステムを使用して、尿失禁直後におむつを交換し、失禁のない状態にしました。また、アクティグラフを装着し、睡眠の状態を調べました。認知症レベルに関係なく個別の排尿ケアは睡眠を良くし、昼間の活動を上げる効果が見られたとの報告でした。

演題8.「回復期リハビリ病棟での排泄動作の向上に役立つ用具使用の基準
      〜多職種での『乗り助・楽助』の使用基準の検討〜」
昭和伊南総合病院 小澤 恵美

転倒などリスクの高い患者さんの排泄介助は「トイレに連れて行きたいのに行けない」「一人では無理」 などの理由で床上での排泄を促していました。しかし看護師として本意ではありませんでした。 そこに登場したのが福祉介護器具「乗り助」「楽助」です。患者さんのQOL向上とスタッフの介助量を軽減させる器具です。使用にあたり、看護師・看護助手・リハビリテーション科・医療相談者が使用基準を検討し、有効に使えるまでになりました。免荷や麻痺のため立位がとりにくいことや回旋動作に恐怖を訴える患者の場合は「乗り助」を使います。立位バランスがとれ、院内の移動手段としても有効活用されています。患者さんの排泄希望をかなえ、介助者の負担軽減も図れる排泄介助用具。これからも使用基準を守り、多職種で共有していきたいというお話でした。              

演題9.「当院におけるDIBキャップの認知度とMRI検査時の安全対策の検討」
埼玉県央病院 北廣 和江

DIBキャップの使用で排尿管理を行うことが多い当院で起こった事例を基に、外来診療に関わる 従事者全員で取り組んだ安全対策についてお話しいただきました。きっかけは、DIBキャップを 症着したままMRI検査を実施したために、磁力でキャップが緩み、尿漏れが起きたことです。 幸い、大事には至らなかたのですが、患者さんのADLを保つためのDIBキャップを、より安全に 確実に使用するために、特徴や注意点などスタッフ全員が知る必要性を強く感じたという報告でした。

演題10.「排尿リハビリテーションへの介入の在り方
       〜作業療法士が排尿管理へ介入するために〜」

湯布院厚生年金病院 リハビリテーション部 太田 有美

湯布院厚生年金病院 リハビリテーション部 太田 有美氏従来の作業療法士の排尿管理介入は「移動行為・移乗行為・トイレ動作」の3工程でした。しかし、 排尿障害への介入ニーズが高まり、作業療法士も看護師や介護師に依存するのではなく、排泄管理の 知識を持ち問題を抱える患者さんに応える必要性を感じました。そこで、排尿リハケアアプローチの 流れを作成し、介入のシステム化を図りました。これまでに介入した様々なケースを通して、排尿管理の 問題の改善案や個々の状態に応じた解決方法の提示ができるようになりました。これまでの取り組み 事例を挙げながら、排尿リハビリテーションへの介入の在り方を述べてくださいました。

演題11.「多尿による夜間頻尿の改善を目指し関わった一症例
       〜排尿日誌を使用して〜」

介護老人保健施設ケアホーム三条 田巻 康弘

当施設は排尿障害のある施設利用者さんに対して、排泄状況が正確に把握できていないことが課題となっていました。そこで、夜間頻尿のA氏へ排尿日誌を使用し、ケアを行った症例を挙げていただきました。 排尿日誌を使用することで、夜間頻尿であり飲水量も日により差があるために、計画的に飲水コントロールを行うことによって1日の排尿量が減少しました。まだ夜間頻尿の改善はみられませんが、多尿は 軽度改善になったそうです。

演題12.「術中虹彩緊張低下症候群について」
まなべ眼科クリニック 眞鍋 洋一

泌尿器科では聞きなれない「術中虹彩緊張低下症候群」とは、前立腺肥大症の治療のα1ブロッカー を内服している患者さんの白内障手術中に見られる現象のことです。簡単に言えば、白内障手術中に 瞳孔が狭くなり手術が難しくなるのです。日常生活では問題になりませんが、白内障の手術を受け る場合は、難易度が上がります。眼科医以外はあまり知られていないので、前立腺肥大の患者さんが 白内障手術をなさる場合は、一言、ご自身の病名を担当医に告げることが大事だと思われます。 今回は基調な「術中虹彩緊張低下症候群」の手術ビデオを供覧する機会に恵まれました 。

演題13.「膀胱粘膜下腫瘍に伴う蓄尿時膀胱痛、頻尿に対する鍼治療の1症例」
明治国際医療大学 臨床鍼灸学教室 伊藤 千展

強い蓄尿時膀胱痛を呈し、重度の頻尿でQOLが著しく損なわれた膀胱粘膜下腫瘍患者(80歳 男性)に対して緩和ケアを目的に鍼治療を施行した症例の報告です。 主治医からの放射線療法、化学療法の併用による原疾患治療を拒み、内服による抗がん剤治療と 緩和ケアによる経過観察となりました。しかし、改善が見られず、緩和ケアを目的に週に1回の 鍼治療を開始。継続治療により痛みなどの軽減、頻尿の改善が得られました。また、仙骨部鍼刺激は 膀胱粘膜下腫瘍における膀胱の異常知覚に対して、抑制的に作用する可能性が示唆されたとの内容で した。

<特別講演>

「尿失禁防止術を再考する」
医療法人社団あんしん会 四谷メディカルキューブ 嘉村 康邦先生

エクササイズのイラスト女性に多い尿失禁にはいくつかのタイプがあり、中でも腹圧性尿失禁が約50%と最も頻度が高い と報告されています。有効な治療方法の一つに骨盤底筋体操が挙げられていますが、重症尿失禁 や骨盤底筋の収縮がない女性では改善は望めず、尿失禁防止術が適応されるそうです。しかし、 低侵襲で治療効果が高いにも関わらず手術件数は少なく、医療・患者の双方ともに、この手術に 対する認識が低いと言われます。腹圧性尿失禁の手術には多くの種類があり、世界的に信頼性の 高いのが“中部尿道スリング術”だそうです。今回の講演では中部尿道スリング手術の誕生の いきさつや、どうして尿漏れが防げるのかお話しくださりました。

最近、導入された新しいキットを使った手術事例を、動画で供覧しながら、詳しく解説していただきました。具体的で、分かりやすい言葉、時にユーモアを交えた解説は、医学知識の少ない参加者(患者さん)も知識を高めることができたと大好評でした。

最後に、開催にあたりお力添えをくださった各メーカー様、御礼を申し上げます。ありがとうございました。

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