セミナー・ワークショップ/介護セミナー
第13回「快適な排尿をめざすセミナー」を開催しました。
日時: 2008年4月12日(土)
13:30〜16:30
場所: メルパルク京都
- 1.「お薬の思わぬ落とし穴:残尿、排尿困難が起こりうる薬について」
- 京都市立病院泌尿器科 医師 上田朋宏
現在、頻尿改善薬や過活動膀胱(OAB)治療薬など、さまざまな薬が市場に出ておりまが、ここではまず抗コリン薬の特徴を理解していただきました。次に応用編として、胃腸の弱い方、肺気腫の方、不眠症の方、神経症の方などが薬で排尿障害が起こっているのに気づかない場合がありますので、このような事例をわかりやすくお話いただきました。
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- 2.「残尿測定の有用性とブラッダースキャンの活用法」
- シスメックス株式会社 大阪支店 販売促進課 POC学術担当 福元 かほり
残尿測定器の製品紹介(背景、操作方法、基本的な使い方)および臨床現場や病棟などでの使われ方について説明いただきました。また、参加者による擬似膀胱測定、ディスカッションも取り入れながら進めてまいりました。
※残尿測定器は個人ではご購入できません
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- まとめ
- 京都市立病院泌尿器科 医師 上田朋宏
内容
1.「お薬の思わぬ落とし穴:残尿、排尿困難が起こりうる薬について」

- 膀胱の役割
主に2つあります。
- 尿をためる
1回に200〜400ml
- 尿を出す
残尿50ml以下
- 自律神経と体性神経
- 交感神経
膀胱の出口。尿を出ないようにする
- 副交感神経
膀胱利尿筋。尿を出す
- 体性神経
尿道括約筋。尿を漏れないようにする
※また、排尿の神経調節について図を使い、説明いただきました。
- 下部尿路症状
- 蓄尿症状
昼間頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感、尿失禁、遺尿、膀胱の知覚異常
- 排尿症状
尿勢低下、尿線分割または散乱、尿線途絶、排尿遅延、腹圧排尿、終末滴下
- 排尿後症状
残尿感、排尿後尿滴下
があります。
- 過活動膀胱(OAB:Overactive bladder)
- 過活動膀胱の概念は、以前は「尿流動態検査により不随意収縮を示すもの」でしたが、新しい概念は、「尿意切迫感を示すもの」と定義されました。尿意切迫感は頻尿、夜間頻尿を通常伴うことです。
- 過活動膀胱の症状
- 以下のような症状が1つ以上ある人は過活動膀胱の可能性があります。
- 尿をする回数が多い→頻尿
- 急に尿がしたくなって、我慢が難しいことがある→尿意切迫感
- 我慢できず尿をもらすことがある→切迫性尿失禁
- 過活動膀胱の治療
- 【行動療法】
生活指導、膀胱訓練、理学療法、排泄介助があります。
- 生活指導
水分やカフェインをとりすぎない、トイレ習慣の改善(はやめのトイレ・外出時のトイレの位置を確認など)
- 膀胱訓練
少しずつ排尿の間隔を延ばして膀胱を大きくさせる訓練法のことです。まず15分間トイレに行くのをがまんし、その後20分、30分と延ばしていき、最終的に2〜3時間の間隔にします。
- 盤底筋訓練
膣、肛門を閉めます、膀胱訓練との併用がよいとされます
- バイオフィードバック療法
腟内の圧力を測定しながら骨盤底筋訓練を行います
があります。
- 排泄介助
一定の時間あるいは排尿パターンに応じてトイレに誘導します
- 【薬物療法】
- 抗コリン薬
(ポラキス、バップフォー、ベシケア、トルテロジン、ウリトス、プロバンサイン)
1日1〜2回服用します。副作用として、口の渇き、眼の調節障害、便秘、認知障害などがあります。
- ブラダロン
- トフラニール(抗うつ薬)
- 【神経刺激療法】
- 電気刺激法
干渉波低周波により骨盤底を刺激するもので、頻尿、尿意切迫感、腹圧性尿失禁に有効です。保険適応が認められた唯一の電気刺激法です。
- 磁気刺激療法
骨盤底への磁気刺激により神経を興奮させ、骨盤底筋を収縮させるもので、骨盤底筋訓練と同様の効果が期待できます。また、着衣のままの治療が可能で、低侵襲です。
- 体内埋込み式
仙骨に刺激電極や刺激装置を埋め込みます。厚生労働省から、まだ認可がおりていません。
- 前立腺肥大症における過活動膀胱
- 【前立腺肥大症とは】
年齢とともに前立腺が大きくなり、それによって尿道が圧迫され、尿が出にくくなる病気です。また、次第に膀胱に変形をもたらし、放置すれば腎不全になることもあります。
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- 【前立腺肥大症におけるOAB】
- 肥大症の半数に過活動膀胱がみられます。
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- 【前立腺肥大症に合併する過活動膀胱の治療】
- 薬物療法
アルファ遮断薬
抗コリン薬(高度排尿障害には使用できません)
アルファ遮断薬+抗コリン薬
- 外科的治療法
があります。
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- お薬の落とし穴
- 抗うつ剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳薬(咳止め)、鎮痙薬、パーキンソン治療薬、抗不安薬、感冒薬等さまざまな薬についてご説明いただきました。
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- ※さらに、詳しくは、会員専用ページに掲載いたします。
2.「残尿測定の有用性とブラッダースキャンの活用法」

- 残尿とは
- 排尿(随意・不随意問わない)の後、排出されずに膀胱内に残っている尿のことです。
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- 残尿があると
- 1回の排尿量が少なくなるので、トイレが近くなったり、尿漏れの原因(溢流性尿失禁)になることがあります。尿路感染症、水腎症などの上部尿路障害の原因にもなります。
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- 排尿管理の現状
- 膀胱内の尿量を測定する手段は、従来カテーテルの挿入とエコー画像診断装置による測定の2種のみでした。看護師により、患者の排尿管理を実施していましたが、膀胱内尿量の簡便な測定手段がありませんでした。そこで、今回はブラッダースキャン(BVI)を皆様にご紹介したいと思います。
〜ます、ブラッダースキャン(BVI)の歴史や機能、BVI6100の測定方法、膀胱容量算出法、精度などについてご紹介いただきました。〜
- 各尿量測定検査のメリット・デメリット
- カテーテル法、エコー法と比べたBVIのメリット、デメリットについてご説明いただきました。
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- BVIの活用法
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- 残尿測定装置として
泌尿器科外来、各種病棟における残尿測定装置の専用装置として、医療従事者の方が簡単に、迅速に実施可能です。
- 患者様の尿意の代わりに
尿意のない患者さまで、間欠導尿を実施されている場合、尿意の代わりにBVIをご使用頂けます。
- 術後の患者管理に
病棟における術後患者の排尿管理に
留置カテーテル抜去後の早期社会復帰や不必要なカテーテル削減に活用できます。
- 各種看護、介護にも
看護、介護分野でもベッドサイドでの簡単な膀胱内尿量測定装置は活躍します。
排尿時期の確認や、排尿の確認、患者様の蓄尿パターンの解析や失禁の鑑別診断、治療効果判定など(排尿日誌の活用)
収益性について
- おむつ使用量、カテーテル使用量、抗生物質投与量が減少し、医療従事者の業務量も軽減します。したがって患者様のQOLも向上し、入院期間の短縮による医療費の抑制も期待できます。
〜参加者にも実際にBVIを使って、測定いただきました。〜
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