看護師のお役立ち情報コーナー
自己導尿について
膀胱にいっぱい尿が溜まっていても、出せなかったらどうなるでしょう。
とても辛い思いをしますね。このような状態(多量の残尿)は、神経の障害によって膀胱の収縮力が落ちる脊髄疾患や脳血管障害、糖尿病、大腸がんの術後、子宮がんの術後などで生じます。その他に、前立腺がんや前立腺肥大症などでは、尿道が狭くなり残尿が生じますし、薬剤の影響から残尿が生じる方もみえます。多量の残尿が続くと、感染で膀胱が痛んだり、尿を作る腎臓が障害を受けてしまいます。
自己導尿法はこの「残尿」をなくすために自分で尿道からカテーテルをいれ、その方にあった時間ごとに、尿の排出をすることを言います。自己導尿法を習得すれば、感染も減らせるし、低圧で排尿することで腎機能障害を予防します。生活の中に取り入れ、自立していくことで、仕事や生活を支障なくすごせるようになります。その方に合わせた導尿方法やスケジュールを指導していき、快適な生活が得られ、笑顔で暮らせるように指導していきましょう。医療者が患者さんやご家族を暖かくサポートしていきましょう。
(1)残尿を放置しておけばどうなるでしょう
腎臓への影響
多量の残尿が続くと、尿が逆流して水腎症や腎盂腎炎などが生じ、腎機能の低下につながります。
膀胱への影響
多量の残尿があると膀胱が伸びきってしまい、膀胱機能が低下します。膀胱壁の血流障害も相まって、細菌感染のリスクが高くなります。
(2)残尿への対応方法
1、導尿を行います
導尿には、医療者が管を入れて行う方法(無菌間欠導尿)と、自分で管をいれて尿を排出させる方法(清潔簡潔導尿: CIC)があります。自己導尿(CIC)を行う人は全国で約1万7000人程度おられ、在宅や、療養型施設など、常時医療関係者がいない状況で排尿を管理して行く際の重要な手段となっています。なお、自分でできない方は家族が行う場合もあります。
2、自己導尿がどうしてもできない方は、尿道留置カテーテルを挿入します
●感染について
1959年にKassらは尿道留置カテーテル留置後4日後には、患者の98〜100%に感染が達したと報告しています。感染のリスクからも、長期の尿道留置カテーテルは避けたいものです。導尿で管理した場合は、感染は30%ほどと報告があります。このことからも、慢性的な残尿がある場合の対処は自己導尿が第一選択となります。
(3)清潔間欠導尿(CIC)とは?
●定義
一定の膀胱容量(一般的に400ml〜500ml)を超えないように、一定時間ごとにカテーテルを用いて尿を排出すること
●どんな疾患の方が多く行うのでしょうか
脊髄疾患や脳血管障害、糖尿病、大腸がんの術後、子宮がんの術後、前立腺がんや前立腺肥大の方などで排出障害と診断され、残尿が多い方(尿閉含む)が行います。
●目的
- 膀胱内を低圧に保ち、腎機能の荒廃を予防する
- 間欠的に導尿を行い、膀胱の収縮と弛緩を繰り返すことにより、均整の取れた
膀胱尿道機能を回復し、維持する
- 膀胱の過伸展を防ぎ、膀胱の血流低下、尿路感染を起こしにくくする
- カテーテルフリーにする
- QOL を向上させる
(4)CICの管理方法
-
1日尿量が1500ml程度になるように、摂取水分量を決める
(摂取水分量は多い方が感染などを減らせるが、導尿回数が増えて大変になるの
で注意)
- 排尿日誌を記録してもらい、排尿のパターンの把握につとめます。
- 排尿日誌をもとに患者と共に、おおまかな導尿の時間や水分を摂る時間を検討します。(1日3〜4回をめどに、できれば夜間は避けるなどの配慮を)1回の導尿量が400〜500ml以下になるように調整します。(コントロールが難しい場合などには、泌尿器科で膀胱機能の検査を行い、適切な導尿計画を検討する必要があります。)
●一定時間ごとの導尿の意義
- 残尿をなくす:感染の予防。尿中の細菌数を減らします
- 受動的な収縮、弛緩の繰り返しにより膀胱のリハビリになります、貯められる膀胱・弛緩できる膀胱=がちがちの膀胱にならないようにし、膀胱過伸展の予防をします。
- 膀胱が充満することにより、膀胱壁が伸展し、虚血を招きます。虚血により細菌抵抗力が落ち、感染することを予防します。
- 平滑筋、血管、神経の慢性的な伸展障害を予防します。
●手順 男性用 (DIBキャップを用いた場合の手順)
- 必要物品を使いやすい位置に準備します。
- 無理しない程度にまず自分で排尿してみます。
- 石鹸で手を洗います。

- 洋式トイレまたは、いすに深く腰掛けます。
- 陰部の消毒。その方に応じてする場合と、しない場合があります。左手で陰茎をもち、右手で消毒綿を持って亀頭部を消毒します。尿道口から外に向けて「の」の字を描く用に消毒します。

- カテーテルを右手で先端から5cm程度のところを鉛筆を握るように、持ちます。

- 左手で陰茎を持ち、静かにカテーテルを挿入します。このときカテーテルの先端に便器や手が触れないように注意します。
- カテーテルが15〜20cm入ったところで(軽く壁に当たったような感じがして3〜5cm挿入したところ)でカレーテルをもって、キャップを外します。このとき尿がこぼれるので、左手でカテーテルをつまみます。

- 便器または、尿器にカテーテルの先端をたらして排尿します。

- 尿が出なくなったら、カテーテルを1〜2回深く挿入したり、浅く引いてみて、尿を出します。完全に排尿したらカテーテルをつまんでゆっくり抜きます。

- 使用後のカテーテルは水道水で中をよく洗い、カテーテルの水気を軽く切って、ケースに収納します。使い捨てのカテーテルを使用した場合は、そのまま捨てます。1回づつ使い捨てます。各市町村によりごみの廃棄方法が異なりますので、確認してください。
●カテーテルの種類
《引用・参考文献》
・2004年ウロナーシング夏季増刊号「排尿自立のポイント90」 メディカ出版
・「今日からできる CIC指導」メディカ出版
・URO DIB自己導尿教室
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