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【間質性膀胱炎の知識】

間質性膀胱炎とは?

間質性膀胱炎(かんしつせいぼうこうえん)とは、頻尿(トイレに行く回数が多いこと、一般には日中8回以上といわれている)や尿意切迫感(おしっこに行きたくなると我慢ができない、急な尿意で困る状態)、膀胱充満時(膀胱におしっこが溜まったとき)の膀胱痛や不快感などの症状がみられる慢性の疾患です。

間質性膀胱炎の患者数は、米国では100万人以上、日本では約25万人いると推定されています。また、その内の約90%が女性だと言われています。日本において、ほとんどの患者は診断も治療も受けていないことがわかってきています。

主な症状

間質性膀胱炎の主な症状は頻尿、尿意切迫感です。そして、排尿を我慢すると、膀胱に痛みや不快を感じます。また、間質性膀胱炎は抗生物質を飲んでも治りません。間質膀胱炎では、脳梗塞や脊髄疾患、糖尿病、神経疾患などの合併もなく、見た目は健康そのものです。にもかかわらず、「20回も30回もトイレに行かなくてはならない」と患者は訴えます。このような症状は、医学部で学んだ細菌性膀胱炎や神経因性膀胱、膀胱癌でもないため、困り果てた医師は、「異常ありません」と診断し、時には精神病扱いをしてしまいます。

治療と診断

このように原因がよく分からない頻尿・尿意切迫感を訴える患者群を、間質性膀胱炎(別名、頻尿・尿意切迫症候群:frequency-urgency syndrome)と呼んできました。

この疾患に対し、米国では1984年、一患者であり医師であるVicki Ratner氏が間質性膀胱炎患者会 (ICA)を創設し、米国政府機関(NIH)を動かし、1988年、研究用の診断基準(National Institute of Digestive, Diabetes and Kidney Diseases; NIDDK基準) を作成しました。 麻酔下水圧拡張時の膀胱鏡所見を必須条項としたことで、多くの臨床医が膀胱粘膜の変化を目の当たりにすることとなりました。ICA創設から約20年、欧米を中心に多くの研究・治療開発が行われました。その中で、米国には100万人以上の患者 がいることがわかってきました。

しかし、この診断基準については、「この基準を満たした患者は10人の医師が10人とも間質性膀胱炎と診断する程度である」というほど厳しい基準になっています。そのような厳しい基準であるため、間質性膀胱炎だろうと考えられる患者の6割が外来でこの基準に適合しないことが明らかになりました。このため、新しい国際基準を作成する動きが欧米で始まりました。ただし、その動きは米国主導で、欧米の2極化がこの世界基準作成の障害になっていました。

このような状況の中、2003年3月28〜30日、5大陸、15カ国から30名の間質性膀胱炎専門家を日本に招待し、世界で初めて、間質性膀胱炎国際専門家会議(ICICJ:International Consultation on Interstitial Cystitis, Japan)(議長 上田朋宏)を開催しました。そこで議論して認識を深めたことは、間質性膀胱炎を「症状で診断する」傾向が強まっているということでした。これには、米国の場合、膀胱鏡検査は多額の医療費負担を患者に強いること、さらに、患者に早く薬物治療などの医療サービスを受けられるようにするという配慮が働いていました。即ち、米国の政治的・経済的な背景があったのです。間質性膀胱炎国際専門家会議では、「頻尿・尿意切迫感があり、明らかな原因疾患がなければ、膀胱痛があってもなくても間質性膀胱炎と診断してよい」という結論になりました。

日本で間質性膀胱炎が診断しにくい理由

実は、間質性膀胱炎の患者は非常に多く、世界でかなり研究が進んでいる疾患であるにもかかわらず、日本の泌尿器科専門医はあまり認識していません。2005年、日本泌尿器科学会総会で初めて公式プログラムに間質性膀胱炎のシンポジウムが組まれたほどです。間質性膀胱炎があまり認識されていない理由は、大きく分けて2つあります。

1つは、間質性膀胱炎の典型は、「膀胱鏡でハンナー潰瘍を認める極度の萎縮膀胱炎」と認識されていることです。萎縮膀胱炎は、すでに1915年に報告された疾患であるため、先に述べた尿意切迫感や頻尿といった症状と間質性膀胱炎がつながらないのです。そのため、医師向けの教科書にも、何の根拠もなく、「間質性膀胱炎は日本に少ない」と書かれています。このような状態では、米国で100万人以上いると言われる間質性膀胱炎が、日本で見つかることが困難です。加えて、膀胱炎に対して膀胱鏡検査は禁忌であることが泌尿器科医のコンセンサスであるため、膀胱鏡を必須検査としてきたNIDDK基準では、確定診断に至らなかったというのが、理解しやすい説明でしょう。

もう1つの大きな理由に、頻尿・尿意切迫感を訴える患者を、過活動膀胱(overactive bladder: OAB)と診断していたことがあります。過活動膀胱は、蓄尿時の膀胱内圧測定で無抑制収縮を認める時に初めて診断がつく、極めて専門的な病名です。一方、先に述べたように、頻尿・尿意切迫感は、非常にありふれた症状です。多くの患者を前に特殊な検査をしなければ診断名がつかない事態は、多くの困っている患者が医療サービスを早期に受けられないことを意味します。

過活動膀胱症候群(OAB)と間質性膀胱炎(IC)

2002年、International Continence Society (ICS)は、「尿意切迫感があり、頻尿や夜間頻尿があれば、切迫性尿失禁の有無に関係なく、過活動膀胱症候群 (OAB syndrome)、または尿意切迫症候群(urge syndrome) または 頻尿・尿意切迫症候群(frequency-urgency syndrome)と定義する」と公表しました。

問題は、ただし書きです。「これらの症候群は、尿流動態検査(urodynamic study)で排尿筋過活動(Detrusor overactivity)が疑われる症状だが、原因となる感染や何らかの疾患が証明されない場合に使用する」と書き加えられています。このただし書きが問題なのです。もし、この症状があって、前立腺肥大や尿道狭窄、括約筋障害、神経因性膀胱や性器脱などがあると、OABにならないのです。OABは症状であって、病態ではありません。例えば頭痛の患者は、特発性であろうが脳腫瘍であろうが頭痛持ちのはずです。前立腺肥大や感染症があろうとなかろうとOABはOABのはずです。

つまり、過活動膀胱症候群(OAB)と間質性膀胱炎も、頻尿・尿意切迫症候群(frequency-urgency syndrome)なのです。同じ疾患を米国では「間質性膀胱炎」、欧州では「過活動膀胱症候群」と異なった名前で呼んでいるのです。このように、多くの名前が同じ病態につけられていると言っても過言ではありません。そこで、欧州では、ICとOABの住みわけを考え、「painful bladder syndrome including IC」として、間質性膀胱炎を定義しました。それは、まさに1988年のNIDDKの研究用診断基準と同じです。

間質性膀胱炎の病態とそれに基づく薬物治療の作用点

間質性膀胱炎の病態は、頻尿・尿意切迫感を起こす要因について整理すると分かりやすいと思います。すなわち、頻尿を起こす病態は、膀胱平滑筋が主体の排尿筋過活動と、尿路上皮が主体の間質性膀胱炎に分けられます。もちろん臨床現場では、両者の合併だと思われます。そして、上皮で何が起こって間質性膀胱炎が起こるのかを免疫組織学的に研究すると、上皮に多くの免疫活性物質(サイトカインや成長因子)が接着し、過剰発現していたのでした。

間質性膀胱炎の診断的治療の実際

間質性膀胱炎が疑われるポイント

排尿日誌(何時に何ccおしっこがでたかについての1日の記録)をつけます。1日8回以上の頻尿で平均排尿量が150ml以下の場合は、間質性膀胱炎が疑われます。例えば、朝起きてすぐ、排尿が300mlぐらい出たとき、不快な痛みがでてその後頻尿になる、尿が貯まるたび膀胱痛がある場合も、疑われます。

頻尿、尿意切迫感を訴える患者の診断と治療
  1. 細菌性膀胱炎はないか?まず検尿で診断します。細菌感染があれば抗菌剤を処方します。
  2. 尿排出障害はないか?残尿(おしっこの残り)が50ml以上ないかを、超音波で診断します。
  3. 抗菌剤で細菌がなくなり、残尿もなくなっても、頻尿・尿意切迫感がとれなければ、まず排尿筋過活動を疑います。

専門医は、膀胱内圧測定(膀胱に尿道から管を入れて、膀胱の圧力を満たす水の量とともに測定し膀胱の活動性をみる)をするわけですが、どこでもこのような尿水力学的検査(urodynamics)ができるわけではありません。そこで、症状で診断する過活動膀胱(OAB)として抗コリン剤を処方します。それでも症状が消えない場合、間質性膀胱炎を疑います。

確定診断には、麻酔下膀胱水圧拡張術を行い、上皮の異常を証明します。この水圧拡張療法は、治療としても、効果は一時的ですが、有効です。

治療の原則は膀胱の活動性を抑えることであり、そのための薬剤の投与が基本になります。間質性膀胱炎は上皮の病気ですが、 平滑筋の過活動が合併していることが多いのです。膀胱平滑筋の正常収縮ならびに異常な無抑制収縮はアセチルコリンームスカリン受容体を介す収縮であるため、抗コリン剤が第一選択になります。

一方、慢性膀胱炎のような知覚過敏症が求心性C線維神経と大きく関わってきていることがわかってきました。そのC線維の受容体、チャンネルが明らかになってきており、多くの薬が開発中です。

抗コリン剤(Anticholinergic Drugs; 抗ムスカリン受容体剤):

第一選択の薬剤です。多くの薬剤が今後も 市場に出てきます。問題は漫然と飲まないことです。
(oxybutynin, propiverine, tolterodine, trospium chloride, YM905, UK88525)

抗うつ剤(Antidepressant):

三環系抗うつ薬も夜間頻尿をコントロールし、かつ膀胱の尿把持力を増加します。 もちろん、神経性頻尿にも有効です。しかし、口渇、眠気などの副作用が問題です。(imipramine)

抗ヒスタミン剤:

膀胱の慢性炎症が頻尿、尿意切迫感の原因になっていることが多く、その中心的役割が 肥満細胞であり、肥満細胞が放出するヒスタミンと言われていて期待されています。

IPD:

抗アレルギー剤として認可されている薬ですが、間質性膀胱炎の頻尿、尿意切迫感、膀胱痛に有効で あることが明らかにされました。現在、日欧米で認可を得るために治験中です。私どもの14例の治療経験では1回排尿量の平均は治療前平均 87.5mlから4ヶ月で179ml 、1年で215mlと増加し、Symptomを優位に緩和しました。

膀胱注入

間質性膀胱炎は上皮の病気ですから、薬の移行を考えると、膀胱に直接薬物注入するのは有効です。

ヒアルロン酸:

関節リュウマチの関節内注入で有効なのと同じ機序で、膀胱注入でも効くと考えられたのですが、米国の治験では有用性が明らかにならず、開発が中止されました。

DMSO:

米国では認可を受けています。肥満細胞の安定化をはかります。

ヘパリン:

GAGの修復を目的として投与されます。

オキシブチニン:

抗コリン剤で、膀胱注入に用いられます。

Resiniferatoxin::(RTX; nonirritating capsaicin analog)

C-fiberを介す頻尿、 尿意切迫感に対し有望な薬剤ですが、治験で有用性は示されていません。

その他
貼付剤 (oxybutynin):

抗コリン剤の副作用をより減らし、膀胱の臓器特異性をあげるために選択されます。
電気刺激も、症状の緩和に有効なようです。

終わりに

頻尿、尿意切迫感の原因が尿にあり、しかも膀胱上皮に異常が起こって(透過性の亢進)生じることは非常に分かりやすい病態ですが、発生原因研究が遅れていました。基本は、おしっこが近くなったら、「気のせい」、「歳のせい」として安易に結論を出さないこと(あきらめないこと)です。そうすることが排尿の悩みに向き合うための第一歩だと思います。 排尿の問題も癌と同様、早期に対応すればそのほとんどは良くなります。


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